2017年11月号『尿失禁』

尿失禁

●尿失禁とは
自分の意思に反して尿が漏れてしまう症状のことです。加えて、これにより社会的・衛生的に支障を生ずるものと定義づけられています。お年寄りのものだけと考えられがちですが、成人女性でも多くみられる症状です。罹患率は加齢にともなって増加しますが、健康な女性でも10-46%と報告されています。

●なぜ女性に多いの?
女性に多い理由は以下と考えられています。
・男性に比べて尿道が短く、直線的である
・尿道を取り囲む前立腺がなく、骨盤底筋群(膀胱などの骨盤内の臓器を支える)が弱い

●尿失禁の種類
尿失禁は、大きく分けて4種類あります。

腹圧性尿失禁
最も多いタイプ、女性の4割を超える2000万人以上が悩まされているといわれている。咳やくしゃみ、重いものを持ち上げるなどおなかに力がはいったときに漏れてしまう。妊娠・出産による骨盤底筋群のゆるみと尿道括約筋の機能低下により起こる。

切迫性尿失禁
突然抑えきれないほどの尿意が起こり、コントロールできずに尿が漏れる。

溢流性尿失禁
尿が出にくい排出障害が基礎疾患としてあり、尿閉状態となり尿が溢れる。

機能性尿失禁
排尿機能は正常だが、運動機能の障害や認知症などのためにトイレに間に合わない。

●治療について
尿失禁のタイプや重症度によって、骨盤底筋体操、薬物療法または外科手術などが選択されます。
薬物療法は、腹圧性尿失禁では補助的な、切迫性尿失禁では中心的な位置づけとなり、膀胱出口にある尿道括約筋を収縮するβ受容体刺激薬や、抗コリン薬が使われます。

●最後に
尿失禁は著しく生活の質を下げるものであるにもかかわらず、恥ずかしいので我慢している方がほとんどで、病院の受診率も非常に低いです。尿失禁は適切な診断・治療により、多くが改善されますので、我慢せず泌尿器科を受診しましょう。